TOBに対する対抗策

ここでは参考として、TOB(敵対的買収)に対する対抗策について主なものをまとめます。

 シャーク・リペラント(サメよけ条項 別名:モーゼの靴底)

買収者をサメに例えてこの名前が付いています。

会社の定款に条項を設定することで普段から敵対的買収へ備える方法です。

設定する項目は以下のとおりです。

ツ黴€  ・スタッガードボード(役員改選コントロール):期差選任制度  取締役の任期に差を付けて一度に選出できる役員の数を制限させる
方法です。

買収側は買収に成功すると買収した会社に役員を送り込んで会社の
コントロールを行いますが、このためには、現存の役員と入れ替え
る必要があります。

現存の役員の任期中に入れ替えるためには現存役員の解任が必要と
なりますが、現存役員の解任には商法257条により正当な理由が
必要であり、これをもって商法343条によって株主総会における
特別決議で議決権の三分の二以上の賛成が必要です。

従って解任による入れ替えは現実には困難な方法であり、これに
拠らなければ役員の任期満了で入れ替えるしか方法はありません。

役員の人数は商法255条で最低3名と定められており、任期は2年
以内です。

取締役会の議決は出席した取締役の過半数ですから、完全に会社を
掌握するには役員の人数を2名入れ替えなければなりません。

もし、全員が2年の期差選任をされていた場合は2名の入れ替え
には4年近く掛かる事になり、それだけ、TOBを行った価値が
希薄してしまう恐れがあります。

この制度はこのための対抗策なのです。

・「拒否権条項付き」優先株の割り当て

これは三井住友銀行と東京三菱銀行との間で起きたUFJ銀行
争奪戦で機能した方法です。

UFJ銀行は東京三菱銀行に「拒否権条項付き」の優先株を発行
しました。

銀行同士の合併のように重要な事項は、普通株主の総会とは別に
このような「種類株」毎の総会での議決が必要となります。

ですから、三井住友銀行がUFJ銀行を買収しようとしても、
東京三菱銀行の優先株の株主総会で否決されると合併が出来
なくなってしまうのです。

三井住友銀行はこの措置で断念せざる終えませんでした。

米国ではこの他に以下の方法も行われています。

・取締役資格制度

取締役に資格要件を設定して制限する。

・株主の制限

臨時株主総会開催権を有する株主を制限する。

・決議要件の変更

会社支配権の変更を決議する要件を重くする。

 チェンジ・オブ・コントロール(資本拘束条項)
ツ黴€  ライセンス契約や代理店契約などの重要な契約を結ぶにあたって、買収などで会社の支配権が変わった(コントロールチェンジ)場合は、相手方の会社が契約を破棄できるとする条項を盛り込んでおく方法です。 これによって、たとえ買収しても買収によって契約が破棄されれば買収した企業の価値が希薄するので買収する意味が無くなってしまうので抑止対策となるのです。
 スーパーマジョリティ(絶対数規定)
ツ黴€  株主総会の決議要件について、合併などの重要案件については、株主総会の1/2以上等のように重くする方法です。 これによって、買収側はより多くの議決件数が必要となるため買収が困難になります。
 ポイズン・ピル(毒薬条項)
ツ黴€  ライツプランとも呼ばれており、特に米国では代表的なTOB対抗策です。 「ライツ」とは株主に新株を与える権利「新株予約権」の事です。

これをあらかじめ既存の株主に配布しておき、TOBが行われた時にライツを所有している株主に新株を発行します。

これによって買収者の持ち株比率が著しく低下するため企業支配が困難になるというものです。

買収を開始してから実施される事から、「後から効いてくる」という事で毒薬と呼ばれています。

 ゴールデン・パラシュート(黄金の落下傘)
ティン・パラシュート(ブリキの落下傘)
ツ黴€  取締役が解任された時はゴールデン・パラシュート、従業員が解雇された時はティン・パラシュートと言います。 いづれも取締役の退職慰労金や従業員の退職金を非常に高額に設定します。

これによって、買収後に取締役の解任や従業員の解雇には非常に高額な費用がかかる事を見せ付けて買収を断念させる方法です。

 公正価格条項
ツ黴€  買収者が支払うべき価格をあらかじめ定めておいて、その価格以下での買収の時には株主総会の特別決議を必要とするもので、買収者が会社支配に必要な買収を終えた後でも同じ価格で買収しなければならないため出費がかさむ方法です。
 ホワイトナイト(白馬の騎士)
ツ黴€  友好的な他の企業に買収してもらうことで、敵対的買収を断念させる方法です。
 パックマン・ディフェンス(逆買収)
ツ黴€  敵対的買収を受けている企業が、敵対的買収をしている企業を逆に買収する方法です。 (株)ナムコのテレビゲーム「パックマン」が「パワーエサ」でモンスターを逆襲することからこの名前が付きました。
 スコーチド・アース・ディフェンス、焦土戦術、クラウンジュエル
ツ黴€  買収のターゲットとなっている企業が持つ資産価値、収益力の高い事業部門もしくは子会社をほとんど売却して買収の価値を希薄化する方法です。
 ジューイッシュデンティスト(ユダヤの歯医者)
ツ黴€  敵対的買収者の社会的弱点を宣伝することによりイメージダウンを図る手法です。 この手法の始まりはアメリカですが、当時は歯科器具メーカーの買収の対抗策で使われました。

この当時はアメリカの歯科医師にはユダヤ系の人が多かった事からこの名前が付きました。

 ショーストッパー
ツ黴€  買収を阻止する法律的な障害を見つけたり、作り出す手法です。
 持ち株比率と経営支配権
ツ黴€  敵対的買収者が必至になって株式を公開買付するのは、株式の所有比率と会社の経営権には以下のような関係があるからです。 発行済株式数の2/3以上 … 特別決議を可決するために必要な比率です。

発行済株式数の1/2以上 … 普通決議を可決するために必要な比率です。

発行済株式数の1/3以上 … 特別決議を否決するために必要な比率です。

特別決議:合併や定款変更など重要な決議事項の際に必要となる決議

参考URL
「M&Aネット」http://www.ma-intercross.com/index.html
「M&Aの促進と敵対的企業買収防衛策」(国立国会図書館)
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0466.pdf

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